個人向け国債の金利はどう決まる?固定5年・固定3年・変動10年を使う時期で比べる選び方
結論を先に書くと、2026年9月募集分の個人向け国債の金利を数字だけで並べれば、固定5年が年2.24%で最も高くなっています。ただしこれは、そのお金を5年間使う予定がなく、発行後に市場金利がさらに動いても利率が変わらなくてよいと考えられる場合に限った結論です。条件が一つ変われば、固定3年や変動10年のほうが比べる軸に合うこともあります。
長期金利の上昇を受けて、個人向け国債への関心は高まっています。Bloombergは、2026年4月から9月までの発行額が前年同期比84%増の5兆1390億円となり、年度上期として過去最高になったと報じました。関心が高い時期ほど、金利の数字が先に目に入りやすくなります。ここでは、窓口とFP事務所で繰り返し受けてきた相談を型に分け、検討した軸と結論の出し方を順に整理します。
相談で繰り返し出る三つの型
個人向け国債の金利についての質問は、細部は違っても、おおむね次の三つに分かれます。
型1:「一番金利が高いものを選べばよいのでは」
最新の金利を見て、数字が最も大きい商品を選べば済むのではないか、と聞かれることがあります。2026年9月募集分であれば固定5年がそれに当たりますが、償還期限は2031年10月15日です。その5年のあいだに使う予定のお金が含まれていないかを、先に確かめる必要があります。
型2:「これから金利が上がるなら変動がよいのでは」
利上げの報道が続くと、発行後も利率が見直される変動10年のほうが得ではないか、と聞かれることがあります。変動10年は半年ごとに適用利率が変わる一方で、2026年9月募集分の初回利率は年1.95%と、固定5年より低い水準から始まります。
型3:「数年後に使うお金を置いておきたい」
3年ほど先に使う予定があり、それまでの置き場所を探している、と聞かれることもあります。償還期限が2029年10月15日の固定3年が候補に入りますが、発行後1年以内は原則として換金できない点は、ほかの2商品と同じです。
3種類の金利を同じ条件で並べる
三つの型に答える前に、金利の決まり方をそろえておきます。個人向け国債は変動10年、固定5年、固定3年の3種類です。財務省の公表によると、変動10年の適用利率は基準金利×0.66、固定5年は基準金利−0.05%、固定3年は基準金利−0.03%で決まります。変動10年の基準金利は10年固定利付国債の入札における平均落札利回り、固定5年・固定3年は市場実勢利回りを基にした各年限の固定利付国債の想定利回りです。
| 項目 | 変動10年 | 固定5年 | 固定3年 |
|---|---|---|---|
| 金利の決まり方 | 基準金利×0.66 | 基準金利−0.05% | 基準金利−0.03% |
| 利率(税引前・年率) | 1.95%(初回) | 2.24% | 1.96% |
| 利率(税引後・年率) | 1.5538575%(初回) | 1.7849440% | 1.5618260% |
| 利率の見直し | 半年ごと | 満期まで固定 | 満期まで固定 |
| 償還期限 | 2036年10月15日 | 2031年10月15日 | 2029年10月15日 |
出典:財務省「個人向け国債の発行条件等(令和8年9月2日)」、「個人向け国債商品概要」
共通の条件として、3商品とも年率0.05%の最低金利があり、利子は年2回受け取り、最低1万円から1万円単位で購入できます。発行価格・償還金額はいずれも額面金額100円につき100円です。この募集分の募集期間は2026年9月3日から9月30日まで、発行日は2026年10月15日です。
使う時期と満期の重なりで比べる
どの型に当てはまっても、最初に確かめるのは金利ではなく、そのお金を使う時期です。個人向け国債は、いずれも発行後1年以内は原則として中途換金できないため、1年以内に使う予定のお金には合いにくくなります。1年を超える資金は、満期と使う時期の重なりを並べると候補が絞れます。
| 使う時期 | 変動10年 | 固定5年 | 固定3年 |
|---|---|---|---|
| 発行から1年以内 | × | × | × |
| 3年前後 | △ | △ | ○ |
| 5年前後 | △ | ○ | ○ |
5年前後で使うお金を固定3年に置く場合は、表で○でも、満期後の2年間の置き場所をあらためて考えることになります。満期が使う時期より先に来るのか後に来るのかを書き出しておくと、型1の問いに答えやすくなります。
金利が動いたときの受け止め方で比べる
型2の問いには、将来の金利を予想する話に入らず、金利が動いたときにどちらの結果を受け入れられるかで考えます。
固定5年と固定3年は、発行時に決まった利率が満期まで変わりません。固定5年が3商品の中で最も高い利率でも、発行後に市場金利がさらに上昇すれば、半年ごとに利率を見直す変動10年のほうが有利になる可能性があります。一方で、変動10年は市場金利が下がれば適用利率も下がりますが、年0.05%の下限を下回ることはありません。
同じ条件でそろえると、固定は「上がっても下がっても変わらない」、変動は「上がれば追随し、下がる余地も残る」という違いになります。分かれ目は、利率が半年ごとに変わる状態を受け止められるかどうかです。
途中で換金するときの差し引き額で比べる
型3のように使う時期が見えていても、予定が早まることはあります。発行後1年が経過すれば、原則としていつでも一部または全部を中途換金できますが、直前2回分の各利子の税引前相当額×0.79685が差し引かれます。保有者が亡くなった場合や、大規模な自然災害で被害を受けた場合には、発行後1年以内でも換金できる特例があります。
仮に固定5年(2026年9月募集分)を100万円購入した場合で試算すると、税引後の利子は年額でおよそ17,849円です。中途換金で差し引かれる額もおよそ17,849円で、税引後の利子のほぼ1年分に当たります。
向き不向きで言えば、換金の予定が読みにくいお金ほど、利率の差よりこの差し引き額の影響が大きくなります。そうしたお金は、使う時期で分けて預金・個人向け国債・投資信託を比べる方法とあわせて検討する対象になります。
結論は軸の順番を決めてから出す
三つの型に共通する結論の出し方は、金利を最後に見ることです。検討は次の順で進めます。
- 使う予定のあるお金を、時期と金額で書き出す
- 発行後1年以内に使うお金を分け、候補から外す
- 残りのお金について、満期との重なりで商品を絞り、中途換金が前提になるものは差し引き額も確かめる
- 金利が動いたときに、固定と変動のどちらの結果を受け入れられるかを決める
- 最後に、その月の募集分の金利を並べて確かめる
個人向け国債は毎月発行されるため、購入の機会は年12回あります。その月の金利を見て急いで決めなくても、軸の順番を整えてから募集期間に申し込むことができます。
購入に年齢制限はなく、証券会社、銀行、郵便局などの取扱金融機関で申し込みます。初回は取扱金融機関を選び、本人確認書類、マイナンバー、印鑑等を準備して国債口座を開設し、募集期間中に購入を申し込みます。発行条件は取扱金融機関によって変わりませんが、口座の開設や維持にかかる手数料、口座開設に要する日数、取扱商品、募集期間は異なる場合があります。財務省の案内とあわせて、申し込み先ごとに確かめておきます。元本の守られ方をほかの方法と並べたい場合は、預金・個人向け国債・投資信託の元本の守り方の比較も参考になります。
相談の最後によく伝えるのは、「金利の数字は、使う時期を書き出してから見ても遅くありません」という一言です。