資産運用の方法を家計の状況別に比べる|預金・個人向け国債・投資信託とETFの違い
資産運用の相談で最も多いのは、「結局、どれで運用すればいいのですか」という質問です。銀行の窓口で11年、その後FP事務所で相談を受けてきましたが、この問いに商品名一つで答えたことはありません。家計のどのお金を動かすかによって、比べる相手が変わるためです。ここでは、利率があらかじめ示される預金・個人向け国債と、利率の決まっていない投資信託・ETFを順に説明し、同じ条件でそろえて並べたうえで、家計の状況別に選び方を考えます。
預金と個人向け国債は、利率の決まり方で比べる
普通預金については、日本銀行の2026年6月の利上げを受け、三菱UFJ・三井住友・みずほの3メガバンクが2026年8月3日に金利を0.3%から0.4%へ引き上げました。家計の中で最も身近な置き場の金利が動いたことになります。
個人向け国債は財務省が発行し、変動10年・固定5年・固定3年の3タイプが毎月発行されています。変動10年は半年ごとに適用利率が見直され、固定5年と固定3年は発行時の利率が満期まで変わりません。いずれのタイプにも年率0.05%の最低金利保証があります。財務省が2026年9月2日に発表した9月募集分の適用利率は、変動10年1.95%、固定5年2.24%、固定3年1.96%です。
投資信託とETFは、費用と買い方で比べる
投資信託には、預金や国債のようにあらかじめ示される利率はありません。その分、費用の見方が比較の中心になります。資産運用業協会の説明では、費用は購入時に販売会社へ支払う購入時手数料、保有中に信託財産から日々差し引かれる信託報酬、換金時に信託財産へ留保される信託財産留保額に分かれ、信託財産留保額はすべてのファンドで発生するわけではありません。
ETFについては、証券取引所に上場し、株式と同様にリアルタイムで売買できる点が投資信託との違いです。一方で、非上場の投資信託は金融機関の窓口などを通じて購入し、基準価額は注文後に公表されます。新NISAの口座を使う場合は、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円で、併用すると年間最大360万円、非課税保有限度額は合計1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)、非課税保有期間は無期限です。
同じ条件でそろえて並べる
| 比べる点 | 個人向け国債 | 投資信託 | ETF |
|---|---|---|---|
| 取引の仕組み | 財務省が毎月発行 | 非上場。金融機関の窓口などを通じて購入 | 証券取引所に上場し、株式と同様に売買 |
| 利率・価格の決まり方 | 固定型は発行時の利率が満期まで続き、変動10年は半年ごとに見直し | 注文後に公表される基準価額 | 取引時間中にリアルタイムで売買 |
| 最低金利保証 | ○(年率0.05%) | × | × |
| 注文時点での価格の分かりやすさ | ○ | △ | ◎ |
出典:財務省「個人向け国債」、マイナビニュース(2026年9月募集分の適用利率)、日本経済新聞(3メガバンクの普通預金金利)、資産運用業協会「投資信託のコスト」、投資の時間(J-FLEC/日本証券業協会)、金融庁「NISA特設ウェブサイト」
| 項目 | 年率 |
|---|---|
| 普通預金(3メガバンク、2026年8月3日から) | 0.4 |
| 個人向け国債 変動10年(2026年9月募集分) | 1.9 |
| 個人向け国債 固定5年(2026年9月募集分) | 2.2 |
| 個人向け国債 固定3年(2026年9月募集分) | 2.0 |
家計の状況から選び方を考える
同じ条件でそろえると、比べる軸は「いつ使うお金か」と「利率や価格がいつ決まる方が落ち着いて持てるか」の二つに集約されます。
- 使う時期がおおよそ決まっている資金:満期まで利率が変わらない固定3年・固定5年を、使う時期と照らし合わせて比べる見方があります。
- 金利の変化に合わせたい資金:半年ごとに利率が見直される変動10年や、金利が改定された普通預金が比較の対象になります。
- 使う予定が当面ない資金:投資信託やETFを候補にする場合は、新NISAの枠と、購入時・保有中・換金時の費用を先に書き出します。
資金を用途と期間で分ける手順はまとまったお金を用途と期間で分ける配分の基本で、費用の読み方は投資信託の仕組みと費用・選ぶときの比較基準で整理しています。
利率が示される方法と示されない方法、合う家計・合わない家計
向き不向きで言えば、預金・個人向け国債は、受け取る利率を先に知ってから資金を置きたい家計に合います。一方で、利率の決まっていない商品で費用を払って運用したいと考える家計にとっては、比較の出発点になりにくい方法です。
投資信託・ETFは、三つの時点の費用を自分で確認し、注文の仕組みの違いを理解したうえで持ち続けられる家計に合います。反対に、注文時点で価格が確定しないことや費用の確認を負担に感じる場合は、合いにくい方法と言えます。どちらを選ぶかは、家計のどのお金を動かすかを決めてから判断しても遅くありません。