毎月の積立額で将来いくらになるか知りたい、積立期間を延ばした場合の差を見たい、想定利回りによる結果の違いを確かめたい。投資信託のシミュレーションを使う目的は、この三つのどれに近いでしょうか。比較したい条件を一つ決め、残りをそろえると、結果の違いを読み取りやすくなります。将来額だけでなく、積み立てた元本と、その元本から増減した額を分けて見ることが出発点です。

将来額の大小だけでは、運用の差を比べられません

比較で避けたいのは、毎月の積立額も期間も違う結果を並べ、将来額が大きいほうを有利と判断することです。投入した元本が違えば、最終的な金額の差には、積み立てたお金の差も含まれます。利回りによる違いを知りたいときは、積立額と期間を固定して比べます。

反対に、毎月の負担を検討したいときは、期間と想定利回りを固定し、積立額だけを変えます。期間を比較するときは、積立額と想定利回りをそろえます。ただし、毎月積み立てる期間を延ばす比較では元本も増えるため、将来額の差をすべて運用収益の差として読まないことが大切です。

シミュレーション上の想定利回りは、計算に置く条件です。結果をよく見せるために利回りを引き上げても、その成果を得られる根拠にはなりません。まず何を比較するかを決めることで、入力値と判断の目的が結び付きます。

積立額・期間・年率を分けて入力する

金融庁のつみたてシミュレーターでは、毎月の積立金額、想定利回りの年率、積立期間の年数を設定して、将来の運用資産額を試算できます。入力するときは、積立額が月額であること、利回りが年率であること、期間の単位が年であることを、それぞれ確認します。

出典:金融庁「つみたてシミュレーター」。試算結果は将来の成果を保証するものではありません。

  1. 比較の目的を「積立額」「期間」「想定利回り」のいずれかに決めます。
  2. 基準となる月額、年数、年率を入力し、入力条件と結果を一緒に記録します。
  3. 目的に対応する項目だけを変え、もう一度試算します。
  4. それぞれの元本と将来額を並べ、将来額から元本を差し引いた額を確認します。

初期投資を入れず、毎月同額を積み立てる設定なら、元本は月額に積立回数を掛けた金額です。初期投資額を設定できるツールでは、その金額も元本に含めて読みます。将来額と元本の差がプラスなら計算上の運用益、マイナスなら計算上の損失です。将来額の全体を「利益」と呼ばず、元本部分を区別すると、結果の意味が明確になります。

入力項目と計算方法でツールを比べる

同じ年率を入力する場合でも、一定の条件で複利計算するツールと、想定リスクも設定して資産額の幅を試算するツールでは、見る対象が異なります。結果を並べる前に、入力項目と計算方法を確認すると、比較のずれを減らせます。

積立シミュレーションの条件の違い
比較する軸 楽天証券 三菱UFJアセットマネジメント
積み立てる金額 毎月積立額 初期投資額と毎月積立額
期間・積立時点 積立期間を年・月で設定 投資期間を設定し、毎月末に積立
運用の条件 期待利回りを年率で設定 想定リターンと想定リスクを年率で設定
計算方法 再投資を前提とする複利計算 モンテカルロ法による複利計算
結果の読み方 最終積立金額を元本と運用益に分けて見る 予想資産額の幅と、元本との差を見る
差し引かれない項目 申込手数料・税金 手数料・税金

出典:楽天証券「積立かんたんシミュレーション」、三菱UFJアセットマネジメント「つみたて投資シミュレーション」。

モンテカルロ法は、乱数を用いた試行を重ねる計算方法です。三菱UFJアセットマネジメントのツールは、この方法で将来資産額の幅を試算します。一つの結果の金額と、幅を持つ結果の一部を取り出して優劣を付けるより、同じツールの中で入力条件を変えたときの違いを見るほうが、比較の目的を保ちやすくなります。

再投資・費用・税金の前提まで読む

楽天証券のツールは、運用の成果を再投資する前提で複利計算を行います。運用で得た分を途中で受け取って使う計画なら、再投資を続ける試算結果とは条件が異なります。「積み立てる月額が同じ」というだけで、実際の資金の受け取り方まで一致しているとは限りません。

また、表のとおり、楽天証券では申込手数料と税金、三菱UFJアセットマネジメントでは手数料と税金が計算に反映されません。そのため、表示された将来額や元本との差を、そのまま手取り額として扱うことはできません。結果を保存するときは、金額に加えて「どの費用や税金が差し引かれていないか」も記録すると、後から比較しやすくなります。

費用の比較へ進む場合は、信託報酬を同じ条件で比べる基準も確認項目の整理につながります。シミュレーションで使う条件と、検討する商品の費用を別々に確認し、数字の意味をそろえて読むことが大切です。

試算で分かることと、判断に使う範囲を分ける

シミュレーションは、設定した条件のもとで将来額がどう変わるかを比較する用途に合います。一方、表示された金額が将来そのまま受け取れるという前提で判断する用途には合いません。積立額、期間、想定利回りのどこを変えた結果なのか、元本との差はいくらなのかを一組として残すと、試算の意味を見失いにくくなります。

FPとしては、シミュレーションの価値は大きな将来額を示すことより、結果を左右する条件を見える形にすることにあると考えます。積立額と期間の選択を検討し、利回りを変えた場合の差も確認する。その比較をどこまで判断に用いるかは、資金を使う目的と合わせて考える余地があります。