SBI証券、楽天証券。新NISAの口座をどこで開くかという相談では、この二つの名前を挙げたうえで「結局どちらがいいのですか」と聞かれることがあります。ここでは比べる軸を「コスト」と「商品ラインナップ」の二つに絞り、相談の型ごとに何を確かめ、どう結論を出すかを整理します。どちらが良いかを決めるのではなく、同じ条件で並べられる状態をつくることが目的です。

相談の型は「持ちたいファンドが決まっているか」で分かれる

金融庁の説明によると、新NISAはつみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を併用でき、年間の投資枠は最大360万円です。非課税保有限度額は生涯で1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)、非課税保有期間は無期限で、制度は2024年1月に始まり恒久化されました。期限のない口座である以上、開く前に比べ方を決めておく意味は小さくありません。

相談の中身を振り返ると、「どこがいい」という同じ質問でも、おおむね次の三つの型に分かれます。以下は個別の相談をそのまま再現したものではなく、よくある形をまとめた類型です。

  • 型1:持ちたいファンドが決まっている。低コストのインデックスファンドなど、名前まで決めたうえで口座を探している。
  • 型2:商品はこれから選ぶ。候補が多いほうが安心だと考え、取扱本数を気にしている。
  • 型3:費用の差が気になる。証券会社によって手数料が変わるのではないかと心配している。

型によって確かめる順番は変わりますが、検討する軸はコストと商品ラインナップの二つで共通しています。

コストで比べる:買付手数料と信託報酬は決まる場所が違う

型3の心配については、まず費用を二つに分けて考えます。一つは購入時にかかる買付手数料、もう一つは保有中にかかる信託報酬です。

買付手数料の点では、SBI証券はインターネットコースを対象に、楽天証券は投資信託の買付手数料をすべて無料としています。同じ条件でそろえると、この項目で二社の間に差はつきません。

一方で、信託報酬については、水準の方針を掲げて見直しているのは運用会社の側です。三菱UFJアセットマネジメントは「eMAXIS Slim」について業界最低水準の運用コストを目指す方針を示し、他社の類似ファンドの信託報酬率が下回った場合には引き下げることを基本としています。2024年12月10日には、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」と「eMAXIS Slim全米株式」の信託報酬を、2025年1月25日から年率0.07568%〜0.08140%(税込)に引き下げると発表しました。

つまり、証券会社を比べる段階でのコストの問いは、「保有中の費用が低いファンドを、その口座のNISA枠で買えるか」という商品ラインナップの問いに置き換わります。信託報酬そのものの比べ方については、信託報酬の目安を同じ条件で比べる基準で整理しています。

商品ラインナップで比べる:本数は日付と数え方をそろえる

型2の相談では、取扱本数が話題になります。公表されている数字を並べると次のとおりですが、日付と数え方が異なるため、そのまま大小を比べることはできません。

SBI証券と楽天証券を同じ項目で並べる
確認項目 SBI証券 楽天証券 同じ条件での比較
投資信託の買付手数料 すべて無料(インターネットコース対象) すべて無料 ○ 差はつかない
成長投資枠の対象本数 1,501本(投資信託、2026年1月15日時点) 1,324本(2025年2月28日時点) △ 日付と数え方が異なる

出典:SBI証券/SBI証券 投資情報メディア/楽天証券/楽天証券 新NISA取扱商品一覧

SBI証券の1,501本はETFやREITなどを除いた投資信託の本数で、同じ時点の業界全体の成長投資枠対象ファンドは2,224本とされています。楽天証券の1,324本は、それより1年近く前の時点の数字で、同じ時点のつみたて投資枠対象は251本です。本数の多さは選択肢の広さを示しますが、実際に保有するのはその中の限られたファンドです。向き不向きで言えば、本数の差よりも、候補になりそうなファンドが両方の一覧に含まれているかのほうが、判断に直結します。

結論の出し方:ファンド名から証券会社へ逆にたどる

銀行の窓口にいた時代、手数料の高い商品を勧めた相手から、数年後にお礼と一緒に苦言を受け取ったことがあります。窓口という入口が先にあり、そこで扱う商品の中から選んだ結果でした。証券会社選びでも、入口から考えるより、持ちたい商品から入口をたどるほうが、費用を見落としにくくなります。

  1. つみたて投資枠と成長投資枠で、それぞれ持ちたいファンドの候補を書き出す。
  2. 同じ日に、SBI証券と楽天証券の新NISA取扱商品一覧を開き、候補が各枠の対象になっているかを検索する。
  3. 候補の信託報酬を運用会社の資料で確認し、買付手数料とあわせて表に書き込む。
  4. 両社とも候補を扱っていれば、コストと商品ラインナップの軸では差がないと判断し、別の軸で決める。片方だけで扱っていれば、その事実を判断材料に加える。

型1の人は手順2から始め、型2の人は手順1に時間をかけ、型3の人は手順3を重点的に確かめる、という使い分けになります。非課税で保有する効果を数字で確かめておきたい場合は、新NISAと普通の投資口座を税金の面から比較した記事が手がかりになります。

二社を並べる前に埋めておく一文は、次のとおりです。「持ちたいファンドは(      )で、SBI証券では(対象/対象外)、楽天証券では(対象/対象外)、買付手数料は(   )、信託報酬は年(   )%。」空欄がすべて埋まった時点で、二社の違いは同じ条件で並んでいます。